「また眠れない夜だ…」
私はため息をつきながら、窓の外を見ました。秋の夜は、とても長いのです。
「カサコソ…」
外で何か音がしたので、そっと覗いてみると、一羽の山鳥が月明かりの中を歩いていました。
「こんな夜遅くまで、まだ起きているの?」
山鳥は美しい鳥です。特に雄の山鳥は、とても長い尾を持っています。その尾は滝のように優雅に垂れ下がって、月の光に照らされてキラキラと輝いています。
「ねぇ、山鳥さん。あなたも一人なの?」
昔から言い伝えられていることですが、山鳥は昼間は夫婦で過ごすのに、夜になると別々の山で眠るそうです。
「私も、一人ぼっちなんだ」
大切な人に会えない夜は、こんなにも長く感じます。山鳥の長い尾を見ていると,この夜もまた、同じように長く続くのだろうなと思います。
「ホーッ、ホーッ」
山鳥が小さく鳴きました。その声が寂しそうに聞こえます。
「分かるよ、その気持ち」
私も一人で眠る夜は寂しいです。会いたい人のことを考えると、余計に時間がゆっくり流れていくように感じられます。
「山鳥さんの尾みたいに、長くて長くて…」
月の光が山鳥の尾を照らすと、まるで銀色の糸のように見えます。その長い尾のように、この夜もどこまでも続いていきそう。
「でも、あなたには明日また会える相手がいるんでしょう?」
山鳥は首をかしげて、私の方を見ました。確かに山鳥は、朝になればまた大切な相手と会えます。でも私は…。
窓の外で、山鳥が静かに飛び立っていきました。長い尾が月明かりに輝いて、まるで光の帯のよう。
「おやすみ、山鳥さん」
私は小さな声でつぶやきました。夜はまだまだ続きますが、山鳥との出会いで、少し心が軽くなった気がします。
遠くから、もう一度山鳥の鳴き声が聞こえてきました。まるで「おやすみなさい」と言ってくれているみたい。
私はそっと目を閉じました。長い夜は続きますが、いつかきっと、大切な人と会える日が来るはず。そう信じながら、静かな眠りについていきました。